説明の訓練は語学学習に通じる(仮説)

俺のブロガー精神論 - シロクマの屑籠

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どうやら今日がその機会のようなので、今日からブログを始めてみようと思います。



説明下手のバイトに説明のやりかたを教えるために悩んでいる
http://lkhjkljkljdkljl.hatenablog.com/entry/2013/02/19/103027


私も自分の考えを言語化したり人に説明したりするのは得意なほうで、特にコレといった訓練をした訳でもなく、もともと読書や議論が好きだったので、自然と上手くなった部類です。
なので、幼い頃からそういう経験をあまり積んでこなかった人のことは想像でしか語れないワケですが、親しい知人にも何人か説明の上手くない人がいるので、その中の一人が自分の部下になったとしたら自分ならどうするか、という想定で思考実験してみました。

まず、問題のフレームを一段階抽象化すると、これは語学能力の訓練である、と言えます。
語学の能力は、読み・書き・聞き・話しに分類でき、さらに言語(日本語や英語)などの区別が付きます。
元エントリの店長候補さんは、日常生活で必要な日本語には特段不便していないようですが、"社会人として仕事上のコミュニケーションを行うための日本語能力"は、まだ未成熟であるようです。

さて、問題を語学能力の習得・向上へと抽象化したので、例えば日本語話者が英語を習得する際のノウハウなどを援用して問題の解決策を考えることができます。
あらゆる言語・社会において当てはまる常識として、2人の人間が1対1でコミュニケーションする際には、文字を用いた筆談よりも、会話の方が短時間で意志を伝えることができます。
そのため、言語を習得する際の最終目標は「自分が他者に伝えたいことを話す能力の習得」になります。

一方で、子供が言語を習得する過程として知られているように、「ことばを話す能力」というものは、「他者が話していることばの聞き取り」→「聞き取った内容の理解」→「理解・習得している語彙を用いた発話」という過程を得て獲得されます。
日本語の「学ぶ」は、「真似る」から来ているという説も、同じことを言っているように思えます。

ただし、「未知の言語を理解できないままに聞き続けながら、発音の試行錯誤を重ねて話せるようになる」という習得法が効果的なのは小さな子供だけです。最低1つの母語を習得している大人であれば、リスニングだけをひたすら続けるよりも、文字を使って意味の理解を促進した方が学習効率は格段に高まります。

学校の教科書が「文字で書かれた本」であって、同じ内容をアナウンサーが話したCDでないのは、人間は音声を聞き取るよりも、文字を読むほうが高速に情報を入力できるからです。
きちんとした根拠は調べていませんが、情報の入出力速度でいえば、読む > 聞く > 話す > 書く の順になると思います。


さて、だいぶ話題が発散してしまったので、そろそろ結論に入っていきたいと思います。

店長のエントリでは、店長候補さんに「仕事で使う言葉」の能力を身につけさせるためのステップとして、読書→朗読→作文→プレゼン という順序で訓練する計画であるということでした。
これはとても効果的な訓練方法だと思います。その上で、少しだけ改良の余地があると思います。

1つめの問題点として、読書する本の語彙と、最終的に獲得したい語彙の不一致が心配です。仕事で役立つ語彙を習得するのであれば、新聞を読むのが効果的なのですが、本人にとって面白くない文章を読み続けることは苦痛になりかねません。
また2つめの問題点として、「自分のアウトプットしている文章が、他者からはどう見えるか」というフィードバックが少し弱いように思えます。

そこで提案したい訓練方法は、「店長が日々の業務指示を文字に書いて店長候補さんに渡し、勤務した結果の報告を文字で書いて提出させ、疑問点・不明点もまた文字に書いて指摘する」という訓練です。コンビニ交換日記。あるいは単なる業務日誌。

業務日誌の最大の長所は実践的であることです。最終的に身につけたい語彙そのものを最初から使えば良いのです。もちろん、初期段階として文章を読んでも意味が理解できない場合に、文章の意味を質問することは許容します。ただし、ふりがなを振った上で音読させるなどの方法で、できるだけ自力で文章を理解し、その内容に従って日常業務を遂行する習慣を身につけさせます。

「毎日顔を合わせているのに、なんでわざわざ紙なんて面倒なことをしなきゃいけないんですか?」といった疑問は当然出てくると思います。その辺りは、店長から店長候補さんへの申し送りが口頭でできないようなシフトの時から導入するなどの工夫で、納得できる理由を見つけてあげて下さい。

作文をさせる内容が、「文章で指示された業務に対する報告」であるというのもミソです。
報告書には、指示書と対になる内容を書けば良いので、必要な語彙はほとんど指示書から拾ってこれます。大学入試の現代文で出題される作文は、本文の切り貼りで回答できるのと同じです。そうやって店長が書いた文章を切り貼りしていく内に、同じような文章を自分でも書くことができるようになります。

最後に、私の提案を整理すると、下記の2点になります。
(1) 他言語の習得と同じで、読み→書き から始めて 話し へとつなげていくべき(聞き は足りている想定)
(2) 訓練であっても、題材はできるだけ実践的であるべき。最終目的への近道であるし、モチベーションも得やすい。

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